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正常性バイアスの働きを知っておこう

正常性バイアスとは

正常性バイアスとは心理学の用語です。人間が予期しない事態に見舞われたとき、ありえないという偏見(バイアス)や先入観が働き、正常な範囲であると自動的に認識する心の働きをいいます。
人間の脳は心の平安を保つために防御作用が備わっていて、正常性バイアスもそのひとつです。ストレスから心を守るため自動的に機能するもので誰でも持ち合わせています。正常性バイアスは日常生活で起こる変化や新しい出来事に対して、過剰に反応しないようにする必要な働きです。しかし、災害時はこの正常性バイアスが働いてしまうと、危険な状態であるはずが、大きな問題ではないと認識してしまいます。
例えば、火災報知機がなった場合「訓練だろう」「誤検知だろう」と正常性バイアスによって都合よく解釈してしまう恐れがあります。火災が発生している非常事態にもかかわらず、問題ないと解釈してしまうのです。

正常性バイアスによって災害から逃げ遅れる

甚大な被害を出した東日本大震災では、「大地震で混乱してすぐに動けなかった」「あんなに巨大な津波がくると思わなかった」という人がたくさんいました。そう話していた人々が住む地域では、「津波から守る堤防が設置されていた」「10m超の津波を経験した人がいなかった」などの要因があり、すぐに避難行動を取れなかったのも事実です。正常性バイアスの働きを理解して、災害発生時の教訓にしておきたいものです。

正常性バイアスへの対策

正常性バイアスによる誤認を防ぐためには、避難訓練を通じて「災害が起きたらこのように行動する」とインプットすることです。東日本大震災で津波による被害を受けた岩手県釜石市の小中学生の生存率は99.8%と非常に高いものでした。「津波てんでんこ」という津波の恐れがある場合、一刻も早く高台へ逃げて命を守るという防災意識の高さと繰り返し防災教育を受けてきた結果といわれています。実際に避難時、点呼をよりも逃げることを優先し、進んで声掛けや避難活動を開始したことも影響しました。避難活動を始めると周囲が「避難をするくらい危険な状態」と認識できるからです。災害時に率先して避難を開始する人を避難率先者といいます。非常時に避難率先者になることで正常性バイアスの誤認を防げるでしょう。

数々の災害によって想定外が生まれます。正常性バイアスによって状況を誤認し、さらなる災害を生みだすことがないように、冷静な対応が求められます。